中措 大樹さんの留学報告

添付資料

タイ日本人会の会報「クルンテープ」に掲載予定の「AITの紹介:AITへ留学した感想」の記事を添付します。

大西: 本日は今年度、AITを卒業される方と在学中の皆さんにAITを紹介して頂こうと集まって頂きました。皆さん、お忙しいところありがとうがざいます。まず、簡単に自己紹介をお願いします。

中村: 日立プラント建設より企業派遣で参りました中村です。私は、経営学部で国際ビジネスを専攻しており、この4月に卒業します。

中谷: 清水建設の中谷と申します。私は海外建設業協会派遣の留学生として参りました。専攻は土木工学で、中村さんと同じく今月卒業です。

牛島: 三朋インターナショナルからAITのHABITECH CENTERに研究生として来ました牛島です。私は研究生なので、現在のプロジェクトが終わるまでこちらにお世話になります。

大西: すると、牛島さんはプロジェクトが仮に10年続けばそれだけタイにいることになるのですか?

牛島: いや、そんなに長くなる事はないと思います。彼女が日本で待っていますので(笑い)

原木: 中谷さんと同じく海外建設業協会の留学生、前田建設工業の原木です。私は昨年の9月入学なので卒業は来年の4月です。まだまだ道は長いですね。中村さんと同じ学部ですが、専攻は技術管理です。

大西: ありがとうございました。私は司会を務めさせていただきます大西です。経営学部の博士課程に在籍しております。博士課程を終えるには最低でも3年で、昨年の5月に入学しましたので、先は原木さんよりずっと長いです(笑い)  AITはAsian Institute of Technologyの略ですが、知らない方も多い方と思いますので、中村さん、詳しく紹介していただけませんか?

中村: AITは、バンコク・ドンムアン空港よりさらに17km北にあり、限りなく田園風景の広がる中に忽然と現れたような印象を与える大学院大学です。キャンパス内には、銀行、郵便局、病院といった日常生活に欠かせない施設はもちろん、ホテル・プール及び9ホールのゴルフ場まで設けられており、極端に言えばキャンパス内より一歩も出ずに生活できる環境となっています。AITはアメリカの極東戦略の一つとして、共産化及び頭脳流出の阻止を目的とし、1959年アメリカ並みの大学院を目指し設立されました。欧米及びアジアの政府・民間企業からの援助により、国又は経済的事情で就学できないアジア各国学生の教育の場として大変に注目されてきました。また、学部は土木工学部・環境資源開発学部・先端技術学部・経営学部の4学部で、30ヶ国約120名からなる教官に、同じく約1,000名の修士及び博士過程の学生がおり、アジアのエリート大学院として高い知名度があります。

大西: そういうエリート大学院に、企業から派遣されてきた皆さんは優秀且つ責任重大なのですね(笑い)皆さんこの1、2年間のキャンパス生活はいかがでしたか?何か特に印象に残ったことはありますか?

原木: まず初めに驚いたのは、アジア諸国の学生が多い事ですね。学生の七割強は近隣諸国からの留学生で、キャンパス内には各国語が飛び交っています。みんな挨拶程度なら4、5各国語できるのでは?「ニーハオ」「ナマステ」「サワデイクラップ」「アンニョンハセヨ」という具合に。

大西: 国際的ですね。二年選手の中村さん、中谷さんはいかがですか?

中谷: 島国日本にいた私達にとって、この人種の多さには最初はとまどいますよね。共通語は英語ですが、みんなお国訛りがあって、私は日本人の英語が一番わかりやすいと思う。家内はAITで日本語教師のボランテイアをしており各国の学生と接していたので、私よりこの訛りの強い英語を理解できます。通訳してほしいと思う事があったくらいです(笑い)

中村: 言葉ももちろんですけど、考え方も随分違いますね。最初、グループ学習で皆の意見を合わせ方向性を決めるのに苦労しました。ここでグループをまとめる力を養えたことは、将来きっと役に立つと思います。何せクラスは小国際連合ですから。

中谷:  生活面は、タイ人学生がホスト役としていろいろ面倒を見てくれました。私は、家族寮の空きがなくキャンパスの外に住んでいましたので、銀行・郵便局からおいしくて安いレストランまでいろいろ教えてもらいました。

牛島:  私はキャンパス内に住んでいるので、朝から晩まで各国の留学生と顔を合わせていました。ちょっと古い言い方ですが、「同じ釜のめしを食べた仲」とでも言うのでしょうか。ここで得た人脈は貴重です。

原木: そうですね。ここの学生は政府派遣が多く、国ではかなりのエリートですから、将来国際ビジネスの舞台できっと役に立つと思います。あの時レポートを書くのを手伝ってあげただろう、だから仕事を回してくれ、と言うように(笑い)

大西: 教授陣もいろいろな国籍があります。

中村:  経営学部の教授は10人程います。インド・アメリカ・スイス・ドイツ・韓国・ベトナム等々、教授も国によって教え方がかなり違います。教科書傾倒型、クラス討論やレポートを重視型など、まず先輩に教授のタイプを聞くのが重要な予習です。

中谷:  私の学部でもいろいろなタイプがありました。英語が聞き取りにくい先生も多かったな。おかげでヒアリングが上達しました。

大西: AITの施設はどうですか?

中村: 施設は正直言って少し古いと感じます。建物よりも、管理部門が最新のコンピュータを導入していないのでトラブルが発生することがよくありました。

大西: それはよくわかります。私も授業料をきちんと払ったにもかかわらず、事務局から何度も請求されて困りました。

原木: コンピュータは古いですね。レスポンスが遅いので最初は壊れているのかと思いました。日本から新しく留学される方は、ノートパソコンを持ってきた方が良いと思います。

中谷: 私は図書館の書籍や資料をもう少し充実してほしいと思いました。これは日本の大学も同じかもしれませんが、古い上に数が少ないのでいつも貸し出し状態でした。

大西: 最後に後輩へ一言ずつアドバイスをお願いします。

原木: やはり、今後大きなマーケットと期待できるアジアで勉強することは、人脈形成・情報交換という点で非常に有意義です。日本企業はとかく欧米に目を向けがちですが、アジアの重要性を再認識してどんどん留学生を派遣してほしいと思います。

中谷: 留学を成功させるには、とにかくコミュニケーションが大切です。AITに留学する良い点は、様々な国籍の学生に出会える事です。英語というとすぐに学校で学んだ発音とか文法に重点をおいたり、アメリカやイギリスの言葉として追い求めてしまいがちです。しかし、違う言葉を持つもの同士が意思疎通する為の手段という原点に立ち戻って、積極的に多くの人と交流してほしいと思います。そうすることにより、きっと楽しく、そして実りある留学生活を過ごすことができるはずです。

牛島: 学生は国費派遣が多いので、彼らは強い目的意識を持って来ています。新しく留学する方は、留学前に何を学びたいか改めて決意してから来た方が良いと思います。

中村: 私も、国費留学生の人生を賭けているような姿勢に多くの事を学び反省もさせられました。実際に勉強を始めると、グループ学習に全く貢献しない人がたまにいて疑問を感じることがありますが、あくまでも勉強は自分の為と思って積極的に努力して下さい。レポートなどは書けば書く程上達します。

大西: 今日はお忙しいところ、貴重なご意見を聞かせて頂き本当にありがとうございました。 皆さんの今後のご活躍をお祈りして、今日の座談会を終らせて頂きます。


  1. はじめに
  2. MBAについて
  3. AITの紹介
  4. 各国の学生
  5. AITへ留学する方へ
  6. 留学に対する提案
  7. 添付資料:AITの紹介(タイ日本人会会報「クルンテープ」への掲載記事より)

[AITでの活動報告]
須崎純一 京都大学大学院 工学研究科社会基盤工学専攻 空間情報学講座