中措 大樹さんの留学報告

AITへ留学する方へ

手続きの概略

AITは、各国政府の援助金で成り立っているので、大半の学生は各国選抜の奨学生である。または企業の派遣留学で、自費でAITに入学する者は少ないのが現状である。そのため、入学審査は学力よりもむしろ、どこから奨学金を得ているのか、自費の学生の場合には財政面の裏付けがあるのかといった点で審査される。もちろん、TOEFL成績表の提示を求められるが、規定の点数というものが無いに等しく実際は参考程度のようだ。とにかく勉強したいというやる気のある者に、その機会を与えることが建学精神なので、各国の学力はまちまちだ。

以下のように、企業派遣による私の97年度入学手続きをまとめてみた。 (須崎補足:昔の3学期制と異なり、2006年1月現在は2学期制が取られており、下記のスケジュールの情報は現在とは少し異なる)

  1. 入学までのスケジュール
  2. 書類:入学申請書類(AITへ)
  3. 書類:入学許可書(AIT事務局より)
  4. 書類:入学承諾書 (AITへ)
  5. 書類:入学証明書(AIT事務局より)
  6. 書類:VISA関連(ED Type)
  7. 書類:入学式に提出する書類
  8. 社内申請書類
  9. 費用

    AIT留学に掛かる実費費用は、総額約450万円である。下記の表は、項目毎の概算費用を記したものである。尚、給与・毎日の生活費は含まず、授業料・寮費・引越し等を主にした。

アドバイス

  1. 勉強面

    授業は毎回予習を必要とし、グループワークにタームペーパー作成と忙しい日々が続く。そのため、日頃から積み重ねた学習、効率的な勉強が必要となる。私も、先輩の留学生からいろいろとアドバイスを受けたが、総合的に判断して何よりも「情報」を入手することが非常に重要だと思った。講義の具体的内容・試験範囲など、同じ国同士の情報交換は大変活発である。数少ない日本人にはハンディが大きい。その他思いつくままに並べてみた。

  2. 卒業論文へのアドバイス

    卒業論文の作成には、フルに3ヶ月つまり5学期間中かかる。ページ数は約50枚と規定されているが、ほとんど皆80枚前後になっている。担当教授との打合せによる変更、英語の校正等何度も修正が必要となるため、4学期から調査を開始したりドラフトに手を付けるなど、早い時期からスタートした方がより良い。テーマ選択が重要だと先にも述べたが、たいていの学生(私も含む)が失敗することは、幅広いテーマを手がけてしまうことだ。書き初めは勢いもあり様々なことに挑戦しようと考えるが、進める程にどんどん広がり収拾がつかなくなってくる。例えば、「タイにおけるインターネット市場の動向」は狭いトピックだと思われるが、実際には様々な経済的要因が重なり莫大な内容と化してしまう。このテーマの場合は、「タイのインターネット広告市場における価格戦略の比較分析」といったような絞り込んだものにすべきである。

    プレゼンテーションは、教授陣から予想不可能な質問が浴びせられるので覚悟して望むべきである。当然、自分で弱いと感じている箇所や自信のないポイントに質問が集中する。それに対して、どのように自分の意見を述べ質問者を納得させられるかが重要である。どこから攻められても良いように、万全の対策と堂々と自分の意見を述べる自信が必要である。

  3. 入学手続き

    SOM 99年度生の入学申し込みの締め切りは6月頃である。留学予定の方は、TOEFLの試験を4月までに受けておかなくてはいけない。TOEFLは独特のクセのある試験なので、最低2回は受験しないと高成績は望めない。また、手続きには時間がかかるので準備は早めに行った方が良い。

  4. 生活面

    タイは熱帯性気候のため気温も高く日差しも強い。日中、屋外で少しでも無理を重ねると疲労度が高くなる。反対に建物内は冷房が効きすぎているため、その温度差から風邪をひき易い。室内に入ることを想定し、軽い上着を余計に持っておいた方が良い。日本人がやりがちであるが、健康面に関しては限界まで我慢しないこと、少しでもおかしいと感じたら少し休む、そして臆さず病院へ行くことである。また、自分用の常備薬を持ち歩くことも良い。海外諸国には、日本では認可されていない強力な薬が簡単に手に入るが、日本人には効きすぎて副作用が出ることもある。なので、信頼できる医師、家庭医を探しておくべきである。

    大分改善されてきたが、日本人からするとホテル・デパート等以外の公衆トイレは気持ち良い所とは言えない。常にティッシュペーパーは携帯し、出せる所で出しておくのが理想である。

    アジア諸国の友人達と家族レベルで付き合うことも少数派日本人には大事だと思う。こうしてネットワークを築いておくと、気付かなかった情報や見落としたAITからの知らせ等様々な情報を得ることができる。食事の内容はもちろん食事作法も違う家庭に招かれたり、招いたりすることはAITにいればこそである。日本食はどこでも人気が高く、今度は天ぷらが食べたいなどと要望も出た程である。

  5. その他

    前に何回も述べたように、コンピューターは必須アイテムである。論文作成のためのMS WORDはもちろん、プレゼンテーション(Power Point)などコンピューターを駆使しなければならない課題が多いのにも係らず、学生数に対するコンピューターの絶対数が不足している。従って、自分のコンピューター及びプリンターを必ず持参または購入してほしい。妻が渡タイした当初、友人もおらず落ち込んでいた時、日本の友人とのE‐Mailのやりとりでどんなに心の支えとなったことか。今では日本にいる家族もコンピューターを購入し、E‐Mailでやりとりするのを楽しみにしているそうだ。また私の場合は、会社との事務連絡を三上さんとのE‐Mailに委ね、従来のFaxに比べると手間も費用も省け大変に重宝した。

    英語はもちろんのこと、MBAの基本的知識並びにSOMの様々な科目、特に基礎数学(私の苦手とする微分積分・統計)等は、知識があると見なされた上で講義が進むので、日本語参考書を買っておくなどの準備をしておいた方が良いと思う。留学前及び留学中においても、日本語の本は大変役に立つ。(もちろん英語でも内容は変わりないが)下記の本は是非一読を勧める。


  1. はじめに
  2. MBAについて
  3. AITの紹介
  4. 各国の学生
  5. AITへ留学する方へ
  6. 留学に対する提案
  7. 添付資料:AITの紹介(タイ日本人会会報「クルンテープ」への掲載記事より)

[AITでの活動報告]
須崎純一 京都大学大学院 工学研究科社会基盤工学専攻 空間情報学講座