QGIS, Rを用いた衛星データ(LST, NDVI)の時空間統計分析2:静的な時空間モデリングの応用事例

ここでは、衛星リモートセンシングデータから生成された地表面温度 (Land Surface Temperature: LST) や、植生指数 (Normalized Difference Vegetation Index: NDVI) を用いた静的な時空間モデリングの応用事例に取り組みます。先にこちらのWebページで、その概要を確認しておいて下さい。

    本演習内容:
  1. 演習内容の概要
  2. (参考)使用するデータ:LST, NDVIデータ
  3. 使用するデータ:大気データ(NOx, SOx等)
  4. 課題
DOY=129でのNOX濃度(単位:ppm) 時空間モデリングにより推定されたDOY=129でのNOX 観測値と推定値の差の残差
DOY=353でのNOX濃度(単位:ppm) 時空間モデリングにより推定されたDOY=353でのNOX 観測値と推定値の差の残差
この演習で最終的に得られる結果の一例:京都府全域を対象にした地上測定局におけるNOXの観測値(単位:ppm)(左)、時空間モデリングにより推定された推定値(中)、残差(右)。(上段)DOY=129、(下段)DOY=353(2012年1月1日をDOY=1)時における結果。

1. 演習内容の概要

日本の主要な都市を対象に、地上の測定局で観測された大気汚染物質を被説明変数に、人工衛星に搭載されたセンサで観測される地表面温度 (LST), 植生指数 (NDVI) を説明変数とする時空間統計モデルを推定する。

2.(参考)使用するデータ

演習では、演習内に提示するデータを利用して処理するが(データはPandAのフォルダに存在)、自分たちでも直接LST, NDVIのプロダクトをダウンロードできる。

(参考)2022年3月修士課程修了の楠瀬智也氏が残してくれた、LST, NDVIプロダクトのダウンロードおよび処理の手引書

3. 使用するデータ:大気データ(NOx, SOx等)

下記のWebサイトにおいて、対象地域、年度、測定物質を指定して「月間値・年間値データ」をダウンロードする。今回はNOXを選ぶとする。

大気汚染常時監視データ|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア

注意:このデータは年度単位であり、LST, NDVIは年単位と異なっている。そのため、2011年度〜2015年度のデータをダウンロードしておく。


4. 課題

各班で以下の課題に取り組んで、レポートを作成し、PandA上のフォルダに提出する。提出後はメールにて連絡する。

特定の県のNOXデータを選び、LST, NDVIに合わせて2012〜2015年の期間を対象に、静的な時空間モデリング(低ランクガウス過程モデル)を行いたい。下記の手順に従って処理を進めよ。
  1. 2012年1月〜2015年12月の月単位の測定物質データを抽出する。
  2. 京都府下の測定局で観測されたNOX濃度のデータ。測定局の名前とコードを抽出し、各月のデータを
    京都府下の測定局で観測されたNOX濃度のデータ。測定局の名前とコードを抽出し、各月のデータを"201201","201202"のように整理している。
  3. 各測定局の緯度、経度の座標を調べる。
    1. 環境省大気汚染物質広域監視システム(そらまめくん)のWebサイトで特定の県の測定局の住所が示される。
    2. アドレスマッチングを利用して、上記の住所を緯度経度に変換する。多数のWebサイトが利用可能であるが、例えば、 QuickConvert等が挙げられる。
  4. 測定局の座標に最も近いLST, NDVIのデータを抽出し、NOXの次にLST, その後にNDVIのお時系列データを追記する。この時点で"201201", "201202"といった年月のデータは"2012001NOX", "2012033NOX"のように2012/01/01を1とするDOYに変換しておく。LST, NDVIの場合、"2012001LST", "2012001NDVI"とする。この後で、'N/A'が多い行は削除しておく。
  5. NOXデータの右側にLST, NDVIの2012年から2015年までのデータが整理された様子(画像には含まれていないが、右方向にNOX, LST, NDVIの順にデータが記録されている。
    NOXデータの右側にLST, NDVIの2012年から2015年までのデータが整理された様子。
  6. 大気汚染物質を被説明変数、LST, NDVI, 緯度、経度、DOYを説明変数として、静的モデリングの時の処理に従ってモデルを推定する。
  7. 注意:
    今回、筆者が京都府のNOXを対象に解析したところ、データがあまり存在しない測定局を除いていくと最終的に25地点しか残らなかった。半数をモデル推定に、残り半数を検証用に分けるとモデル推定には不十分であったため、モデルを推定するために、このページの内容に下記の点で修正を加えている。
    DOY=353でのNOX濃度(単位:ppm) 時空間モデリングにより推定されたDOY=353でのNOX 観測値と推定値の差の残差
    得られた結果の一例:京都府全域を対象にした地上測定局におけるNOXの観測値(単位:ppm)(左)、時空間モデリングにより推定された推定値(中)、残差(右)。DOY=353(2012年1月1日をDOY=1)時における結果。
  8. (余力があれば)上記の処理を同一県の異なる大気汚染物質に対して繰り返し、大気汚染物質を被説明変数するモデルを推定し、比較する。
  9. (余力があれば)上記の処理を異なる近隣の県において繰り返し、大気汚染物質を被説明変数するモデルを推定し、比較する。

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須ア純一 京都大学大学院 工学研究科社会基盤工学専攻 空間情報学講座