空間情報学講座 Geoinformatics Lab.

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京都大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻

研究内容

都市内の移動体の観測とデータの活用

都市内を活性化する上で、ひとやモノの移動の円滑性、安全性を維持することは重要な課題といえます。 そのため、GNSS、携帯電話、ビデオ観測などを活用して、都市内の移動体の観測を行うとともに、交通混雑、防災、観光振興などの問題解決に向けた活用方法を提案します。


携帯基地局データを活用した訪問者の時間的分布

衛星リモートセンシング

差分干渉SAR (DInSAR) を用いた地盤・構造物の変位推定

多時期に取得された衛星搭載型の合成開口レーダ(SAR)を用いて、地盤面の変動量を推定する差分干渉SAR (Differential Interferometric SAR: DInSAR)という技術が開発されてきました。近年では土木構造物の変動解析に使える可能性にも注目が集められています。本研究室では、宇治キャンパスの生存圏研究所の大型の電波暗室 (Microwave Energy Transmission Laboratory: METLAB) や桂キャンパス内の屋外を利用して、基礎的な散乱特性把握のための実験を行っています。また代表的なDInSAR手法である、Permanent (またはPersistent) Scatterers Interferometric Synthetic Aperture Radar (PSInSAR)や、Small-BAseline Subset (SBAS) 等の手法に対し、幅広く適用できるように開発に取り組んでいます。

例えば、関西国際空港のように、1期島と2期島と異なる沈下速度を持つ土地が比較的狭い陸地で接続していると、既存のPSInSAR手法では強い散乱を示すPermanent Scatterer (PS) をつなぐリンクから構成されるネットワークが十分に形成されないことがあります。沈下速度はPS間の相対的な沈下速度を積み上げて推定されますので、正しいネットワークの形成が推定沈下速度の精度に直結します。下記の図では、正しい沈下速度を推定できなくなります。


PSInSARにおけるネットワーク形成の問題点: (a) 関係のないリンクが発生する場合、(b) リンクが途切れてしまう場合

人工衛星を用いて推定した沈下速度分布図: (a) 関西国際空港(光学衛星画像), (b) 人工衛星合成開口レーダ(SAR)画像: TerraSAR-X画像(ドイツDLR), (c) 衛星画像から推定した沈下速度( 2010年12月~2012年12月), (d) 水準測量から得た沈下速度(検証用データ)。ここで推定した沈下速度は、上記の問題点を克服しています。

コーナーリフレクター(CR)を用いた散乱計測実験。(a) 1 m CR、(b) 40 cm CR、(c) 40 cm CR。小型でも多数CRを配置し、同時に配置を工夫することで、土木構造物の機能を阻害せず、高精度で変動速度を推定できる方法を検討しています。

多偏波SAR (PolSAR) を用いた都市域・都市密度の推定

衛星搭載型の多偏波合成開口レーダ(Polarimetric Synthetic Aperture Radar: PolSAR)を用いて、建蔽率や容積率のような建物の密度を反映した指標を作成し、都市密度を推定する研究を行っています。通常、衛星画像や航空写真から3次元データを推定するには、同一地点を異なる視点から撮影した2枚の画像が必要になりますが、この手法では一時期の多偏波データがあれば高さを反映した都市密度を推定できます。そのため、統計データが不足する地域を含めた都市構造の比較に役立てられる可能性があります。


人工衛星を用いて推定した都市密度分布図: (左)JAXAが打ち上げたALOS衛星に搭載されたPALSARセンサを利用して生成した都市密度分布図、(中)ZENRINのZmap TownIIを用いて生成した建蔽率、(右)同じく容積率。生成された都市密度分布図は建蔽率、容積率の両方の中間に相当する性質を持ち合わせている。

3次元点群処理((航空機・地上)レーザ・航空写真)

航空機レーザ (Light detection and ranging: LiDAR)データからの建物の3次元モデル生成は、長年取り組まれてきた重要な応用分野の一つです。しかし日本国内の古い町並みの場合は、伝統的建物である切妻造や寄棟造、入母屋造といった屋根が傾斜した建物が密集し、同様の高さの建物が連続するため、従来のモデリング手法は効果的ではありません。そこで、航空写真と航空機LiDARデータを併用して建物の3次元モデルを自動生成するアルゴリズムを提案しました。

この航空機LiDARデータを用いて、建物や植生等の一切の地物による囲まれ感を表す囲繞度(いじょうど)を推定することができます。現在、視野内に含まれる植生の割合を表す緑視率への応用を研究しているところです。

一方、航空機LiDARデータに比べて、航空写真の方が被災状況の把握のために幅広く利用されています。手動で被災街区、建物を抽出すると自動処理よりも確実な情報が得られますが時間を要し,広域を対象に処理するには限界があります。そこで,災害前後に撮影されたステレオ航空写真から3次元座標を持つ3次元点群を生成した後に、被災建物を自動抽出する手法を研究しています。

京都市東山区での建物モデリング例: (左上)航空写真、(右上)著者が開発した領域分割手法を適用した領域分割結果、(下)モデリング結果。青色が切妻屋根、黄緑色が寄棟屋根、紫色が片流れ屋根、赤色が平屋根のモデルを表している。京都のように屋根の傾斜や高さに変化のない建物が密集している地域ほど提案手法が効果を発揮する。

写真測量・画像処理

私達は、京都市東山区を中心に建物の3次元モデリングに取り組んできました。後述する航空機レーザデータを使う研究も行う傍ら、地上での近接写真測量で効率的に建物をモデリングする手法に取り組んできました。

また画像処理に関連して、画像から特定の地物を抽出するための領域分割手法が長年研究されてきました。しかしながら、密集市街地では建物が極めて隣接することで建物の境界線が明瞭でなくなるだけでなく、隣接した建物の影が写り込みやすくなるため、従来の領域分割手法は機能しないことが多々あります。そこで本研究では、局所的に最適な空間的な平滑化パラメータを適用することで、画像内に存在する家屋を屋根の大小に関わらず、隣接する建物の影の影響を緩和しながら良好に抽出できるアルゴリズムを開発しました。

近接写真測量を用いた京都市東山区での建物モデル(左)と ベトナム・ハノイ市The Old Quarterでの建物モデル(右)
京都市東山区での航空写真を領域分割した結果: (左)航空写真、(中)ENVI EX4.8を用いて領域分割した結果、(右)著者が開発した手法を適用した領域分割結果。密集市街地で発生しやすい建物の影が投影された屋根と道路との境界線が不明瞭だが、提案手法では従来手法より効果的に領域を分割できている。

ウォーカビリティの概念に基づく歩行空間整備の分析・評価

都市の賑わいや健康的な暮らしといった観点から、都市内の歩行空間の一層の充実が都市政策上重要な課題となっています。 都市内の歩きやすさを客観的にかつ面的に把握できるウォーカビリティ指標(Walkability Index)に着目し、 地理情報システム(GIS)を用いて、歩行活動量に対応する環境要因を分析することで、 今後の歩行空間の整備を効果的に進める方法の構築を目指しています。


草津川跡地公園(滋賀県草津市)整備前後におけるウォーカビリティ指標の相対的変化(左:整備前、右:整備後)
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