髙橋妙子
財団法人 地球環境戦略研究機関 Institute for Global Environmental Strategies (IGES）バンコク事務所
政策研究を行う地球環境戦略研究機関 （IGES）はアジア地域における研究活動をさらに促進し、同地域の関係機関との連携を強化することを目的とし2003年5月アジア工科大学（AIT）構内にある国際連合環境計画アジア太平洋地域資源センター（UNEP RRC.AP）の協力のもとバンコク事務所を設置した。神奈川県にある本部を含め日本国内には数箇所の事務所を持つ一方、海外では初めてとあって試行錯誤を重ねながら今年で3年目に入った。設立以来本部より派遣され様々な活動を行ってきたが、ここで少し近況について報告する。
東南アジア諸国のなかでも中心的役割を果たしているタイに事務所を構えることはIGESにとってその活動、研究成果を広く知ってもらいパートナーシップを強化しながらより実践的な戦略研究を行って上で重要な意味をもっている。そのためバンコク事務所では多岐にわたりパートナーシップを促進してきた。具体的にはアジア開発銀行、地球環境ファシリティーの出資によるメコン川流域諸国環境パフォーマンス・アセスメントプロジェクトへの参画、UNEPが2007年に出版を計画している「Global Environment Outlook」への北東アジア及び政策提言のインプットなどを行っている。さらにタイ企業のSiam Cement Groupとは設立時よりコミュニケーションを続けており先月にはグループ各社のマネージャーを対象に企業の社会的責任や環境管理システム、及び国際的な環境問題に関してのセミナーを行った。また研究面では環境省委託事業「アジア太平洋環境イノベーション戦略プロジェクト」のもと「中小企業の環境パフォーマンス向上」をテーマにThailand Environment Institute と共同研究を行ったところである。
研究員としての業務をこなしながら海外にある事務所のマネジメント、パートナーシップ促進、アウトリーチと多様な業務を遂行していくバランスに難しさを感じることもあるが、多くのことを経験し学べる機会を与えてもらったことに感謝している。
IGESでは気候政策、都市環境管理、淡水資源管理などアジア諸国が抱える緊急課題を取り上げたいくつかのプロジェクトで政策研究を行いその成果を政策形成へ反映していくべくアウトリーチを行っている。域内の優秀な人材が集まるAITにはタイのみならず近隣諸国から集まった上記分野での専門家が多数在籍している。そのためAIT構内に事務所を置くことにより幅広い視野から活発な意見交換を行いながら研究成果を高めていくことが期待できる。つまりそれはIGESとAIT両機関のより積極的な交流と協力体制を築き上げ双方にとって非常に有益な形で将来に繋がっていくものと考えている。
また、個人レベルではAITに在籍されている日本人教官の方々の積極的なコミュニケーションの輪に参加させていただき、知りえなかった情報、身近なことなどをお話しすることにより異国で生活する上で大きな支えになっていただいていることを最後に付け加えたい。