福石幸生の近況報告

福石幸生
Transportation Engineering, School of Civil Engineering

近況の報告

AITでの生活が始まった2005年8月から約2ヶ月が経過しました。この期間は、様々なことに慣れることに時間を費やしていました。日本と違い大学の中で生活しながら、勉学に励むというスタイルは初めてでしたので、試行錯誤しつつ自分のスタイルを作ってゆきました。新しい環境で、暮らすということは自分の思っている以上に、苦労しました。しかし、全てが自分にとって新鮮であり、毎日が学びとなっています。

私は、School of Civil Engineering(SCE)のTransportation Engineeringに所属しています。現在、4つの講座に出席しています。1つの講座が、週2回授業があるため、ほぼ毎日授業があります。毎日、授業の復習や課題に追われて過ごしています。

授業のスタイルにおいても、テレビドラマや映画で見たアメリカの形式に近い授業など、日本とは全く異なる授業形式で行われたりしています。大学時代は、先生の話を聞くだけの講義が多かったので、新鮮ですが慣れるまでが大変でした。講義中に先生に意見を求められることは、大学学部時代には無かったからです。

今月は、授業のプロジェクトにより、タイのスパンブリー県を訪れ、交差点などの道路環境について、調査を行いました。私の班は、タイ人2人とインド人1人と、私の合計4人です。博士課程の生徒が1人、修士課程の生徒が3人です。 ビデオカメラを使用した交通量を測定したり、写真を撮りながら、交差点の環境について、何が問題かを議論しました。タイは、現在、道路の整備が急速な速さで進んでいます。しかし、その反面、様々な交通の問題を持っていることもまた事実です。その問題を、様々な国籍の生徒の視点で観察するというのは、とても意味のあることだと思いました。皆、全く違った考え方のプロセスなので、議論をしていて飽きません。AITだからこそできる観察の視点だと思います。

また、別の授業では、3つのグループに分かれて「Bus Rapid Transit」「Transportation system for elderly」「sustainable transportation」の3つのテーマについて簡単な調査を行っています。私のグループは「sustainable transportation」を担当しています。「持続可能な発展」というキーワードが世界中に広がってから、10年以上の時が流れました。各国が様々な政策を打ち出しています。改めて、「持続可能な交通」とは何かを考えています。

上記のプロジェクトと同様、そのプロセスにおいて、日本とは全く異なる印象を受けました。責任の所在が、とても明確に定義されます。そして、全体を通しての強い一貫性が必要とされます。アメリカ的と表現するのが適切でしょう。 このように、忙しく日々を過ごしていますが、逆に毎日が刺激的で飽きることがありません。あっという間に、一日一日が過ぎていっていますが、毎日を大切に生活していきたいです。

AITに在籍することの意義

大学で生活し始めてから2ヶ月余りの私が意見を述べるにはあまりにも無謀ですが、この2ヶ月余りの生活の中から感じたことを記していきます。

まず、当たり前のことですが、AITは「国際性」という点において、他の大学と大きく異なります。もちろん、私自身、このことは十分承知しており、その上で、AITを学び舎に選びました。しかし、私が以前思い抱いていた「国際性」と、現在私自身が感じている「国際性」には大きな隔たりがありました。様々な国々の人々と出会い、意見を交換することは、私が思い抱いていた以上に深い経験を、私自身に与えてくれています。

もちろん、日本では様々な媒体を通じて世界中の情報を即座に手に入れることができます。より安いコストで、より手軽に体験できると言うメリットが私達日本人にはあります。しかし、実際にその国の人々に出会い、長い時間の中で会話、議論を重ねることは、それとは全く異なる次元で、私達に深い経験を与えてくれると感じています。

技術の発達により、私達は世界中の人々と即座にアクセスし、コミュニケーションを取ることができます。しかし、実際に出会い、コミュニケーションを取ることは、心の中に深い印象を刻むことが出来ます。バックグラウンドの違いを、大きく感じるのです。ちょっとした仕草の違いでも、私には非常に興味深いです。

次に、授業中などで、講師の方々が様々な先進技術の紹介をされますが、その例として日本が多く取り上げられます。自分自身にとっては、当たり前であり、驚くことでは無いものでも、他の国の人々から非常に大きなリアクションが返ってくることがしばしばあります。そして、授業後に、そのことについて質問をされたりします。

AITの生徒達は、新しいことを学ぼうとする姿勢がとても大きいです。何か興味のある事項で、新しい情報を見つけると、それを徹底的に調べます。彼らの行動力には驚くことが多いです。彼らと一緒に学ぶことは、逆に自分自身にも良い影響が現れていると感じています。

最後に、AITでの生活において、私が一番強く感じたこと、それは、お互いの文化を尊重しあえる環境であることです。国際化社会と言われて等しい現在においても、AITのように実際に他民族他宗教の人々が集い、学び、生活するという環境は世界に類を見ないのでしょうか。 環境問題など、現在私達は地球規模で結束し、解決しなければならない問題を数多く抱えています。その解決のためには、世界中の人々が共に考え、同じテーブルの上で議論を重ねる必要があります。そのために本当に必要な環境が、現在世界にどれだけ存在するでしょうか。

21世紀において、AITはアジアのみならず世界全体を先導する可能性を持っていると思います。


[AITでの活動報告]
須崎純一 京都大学大学院 工学研究科社会基盤工学専攻 空間情報学講座