荒巻俊也の近況報告

荒巻俊也
School of Environment, Resources and Development(環境資源開発学研究科)
Environmental Engineering and Management Field of Study(環境工学専攻)
客員助教授

近況の報告

私がJICA(国際協力機構)派遣の長期専門家としてAITに着任して、早1年と5ヶ月が経とうとしています。本報では、AITでの活動の様子を簡単にご紹介したいと思います。

私が所属する環境工学専攻(AITでは専攻のことをField of Studyと言っています)では、1979年からJICAの長期派遣専門家を教官として受け入れてきており、私で17人目の専門家となります。(AIT全体では120名弱)環境工学専攻では、上下水道とその処理技術、廃棄物、大気環境や水環境の問題、環境や生態系における有害物質の問題、などを対象として、教育・研究活動を行って、AITの中では最も大きな専攻の一つとなっています。専攻での私の教官としての活動は、講義と演習、学生の研究指導、そして自分の研究、ということになります。

講義・演習では、「廃棄物管理」、「環境管理」、「上下水道設計」を主に担当しています。すでに1年半講義をしてきましたが、学生の出身国、大学時代の専門などのバックグラウンドが多様であり、とまどうことも少なくありません。一番とまどったのは、やはり英語の違い、だったでしょうか。AITではタイ英語、ベトナム英語、インド英語、そして私の日本英語、などさまざまな英語が飛び交っています。また、私が当たり前のように使っていた用語が通用しないこともありました。幸い、わからない用語を授業中に指摘してくれる学生がいるので、助かりますが。AITの学生は基本的に熱心で、授業にきちんと出席し、講義もきちんと聞いています。これは、授業料が受講する単位数によって決まっていることも効いているのかもしれません。特に私が担当した「環境管理」は環境工学専攻の必修講義であり70名近くの学生が毎回受講したのですが、やりがいもありましたが、レポートや試験の採点などいろいろと大変なこともありました。筆記体も国によって(人によって?)微妙に違ったりしていますし。

学生の研究指導では、1年目は5名、今年は7名の修士課程の学生を指導しています。国籍も、タイ、ベトナム、スリランカ、ミャンマー、カンボジア、バングラデシュ、と多様です。環境工学専攻の学生は自分の出身地の環境問題を研究対象とする学生が多く、彼らの研究指導を通じてその国の環境問題について現地の言葉による情報が入ってきます。これは私にとってはこの地域の問題を知るという意味で、貴重な情報であり経験であると思います。自分の研究の方は、講義や研究指導に時間を取られることも多く、思っていたほどはすすまない、というのが現状です。

専攻での活動以外に、私はAITにおける日本人教官代表となっており、日本政府拠出金の管理、さまざまな日本関係のアクティビティのコーディネートを行っています。日本政府は1960年代からAITに、私のような教官の派遣以外に、AITで学ぶ学生のための奨学金の支給、設備や機材の購入資金の支援などさまざまな支援を行いAITの活動に大きな貢献をしてきました。しかし、近年はODAの見直しなどによりその支援を大幅に減らしています。一方で、日本の大学や研究機関からの訪問者は多く、さまざまな共同研究が行われております。また、いくつかの大学とは大学間協定もあり、短期留学という形で日本の大学からAITを訪れる学生もいます。

今年に入って、ASEANファウンデーションの支援によるAITとホーチミン工科大学、プノンペン王立大学の共催によるワークショップの講演者として、ホーチミン、プノンペンを訪れる機会がありました。これらの訪問で、両大学で活躍する多くのAITの卒業生に出会いました。AITの卒業生の多くは自国に戻って、大学や研究機関、行政、民間企業などで活躍しており、この地域におけるAITの優位性を感じることができました。また彼らと話で、AITにこれまでに派遣されてきた日本人の先生方のお名前を多数お聞きすることもできました。AITは国際機関である大学院大学という世界的に見ても非常にユニークな存在であり、今後も日本、あるいは日本のさまざまな組織がこのユニークな存在に対してさまざまな形で貢献し、また利用していくことを強く期待しています。


[AITでの活動報告]
須崎純一 京都大学大学院 工学研究科社会基盤工学専攻 空間情報学講座